ここでは、厚生局の整骨院・接骨院(柔道整復師)に対する個別指導(行政指導)、監査の実例をご紹介していきます。
実例は、厚生局の受領委任の取扱いの中止事例(中止相当事例)に基づいており、以下の弁護士によるコラムの一覧の事例を参考にしています。
事例1 一律100円のあんまで中止となった事例
一律100円のあんま(不正請求)で、受領委任の取扱いの中止となった実例です。保険での施術は施術ごとに単価が決まっており、定額一律での徴収は、ルールとして認められていないことに留意する必要があります。これは、保険で定められた金額より高い場合も、低い場合も、どちらもルールに違反し不適切です。誤解していると思われる柔道整復師の方を散見しますので、誤解がないように注意して下さい。
【事例紹介】 平成25年8月に厚生局に「整骨院が、100円(定額)であんまを行っており、その他にもいろいろと不正を行っている。」との情報提供があり、その後も同様の情報提供が寄せられ、患者調査を実施したところ、負傷名(症状)について、支給申請書の記載内容と患者からの回答とに相違がみられ、慢性的な肩こり、腰痛等に対する施術であると疑われたものが多数見受けられ、一部負担金の徴収額が一律であるとの回答がほとんどであったことから、個別指導が実施され、不正請求等の疑義の事実確認のため、監査に至りました。
監査では、実際には療養費の支給対象となる負傷ではないのに、療養費の支給対象となるよう偽った負傷名や負傷原因を付して施術録に記載し、当該負傷に関し施術を行ったとして療養費を不正に請求していたことが確認され、受領委任の取扱いの中止となりました。
事例2 整骨院のマッサージの不正請求
マッサージで療養費を不正に請求し、受領委任の取扱いの中止相当となった実例です。いわゆるマッサージでは、柔整師の施術で保険は使えません。受領委任で取り扱える範囲はルールで厳しく限定されていますので、十分注意する必要があります。
【事例紹介】
平成27年3月に県から厚生局に、保険者が整骨院の患者に対して文書照会を行ったところ、「負傷原因や負傷部位が相違し保険適用外の傷病(慢性の肩こり、腰痛)に対する施術について保険請求している」、「一部負担金が正しく徴収されていない」との情報提供がありました。そこで、厚生局は、整骨院に個別指導を実施したところ、負傷原因及び負傷部位について、施術録の記載内容と文書照会の結果が相違している例が複数確認されたため、個別指導を中断し、患者調査を実施したところ、負傷名、負傷原因について、支給申請書の記載内容と患者からの回答に相違がみられ、また、一部負担金の徴収額が一律(100円、200円または300円)であるとの回答がほとんどでした。個別指導を再開し、柔道整復師に対し説明を求めるも、明確な説明はなく、単なる肩こり等へのマッサージについて療養費の請求を行っていることが強く疑われたため、個別指導を中止し、監査に至りました。
監査では、実際には療養費の支給対象となる負傷ではないにもかかわらず、療養費の支給対象となるよう偽った負傷名や負傷原因を付して施術録に記載し、当該負傷に関し施術を行ったとして療養費を不正に請求していたことが確認され、受領委任の取扱いの中止相当となりました。
事例3 整骨院の療養費の付増請求
整骨院で患者が施術所に来ていない日を来ているものとして療養費を付増請求(日数)し中止相当となった実例です。日数の付増請求は、典型的な不正請求であり、不正請求の中でも悪質性が高いと判断される類型です。厚生局としては、日数の水増しの不正請求が行われている場合、その施術所について、厳しく対応してくるものと考えられます。
【事例紹介】
厚生局に、「整骨院で施術を受けた患者に係る医療費通知の受療日数と患者自身が記録していた受療日数が相違している。」との情報提供があり、患者調査を実施したところ、患者の一部について、整骨院で柔道整復に係る施術を受けていない日の療養費が請求されていること(架空請求)が疑われ、施術管理者である柔道整復師に監査を実施した。
監査の結果、実際には患者が施術を受けていない日及び施術を行っていない施術内容について、柔道整復に係る施術を行ったものとして、施術日数及び施術内容を付け増して、療養費を不正に請求していたことが確認され、受領委任の取扱いの中止相当となりました。
事例4 整骨院の施術所外施術の不正請求
施術所以外の場所で施術を行い療養費を請求するという不正請求をし、受領委任の取扱いの中止相当となった実例です。原則として、整骨院で施術を行う必要がありますので、特に、部活動の顧問やスポーツのトレーナーなどで、運動場などでの施術所外の施術を請求してしまわないよう、留意する必要があります。また、そもそも、個別指導などで施術所外施術を柔道整復師が主張する場合では、厚生局としては、そもそも施術が実際に行われているのか、問題意識をもつケースもあろうかと思われます。
【事例紹介】
トレーナー契約を締結している高等学校へ赴き、生徒に対して部活動終了後に治療を行い、療養費として請求しているとの情報提供があり、厚生局が個別指導を実施したところ、疑義が生じ、個別指導を中断の上で監査の実施に至りました。
監査の結果、施術所以外の場所で施術を行ったにもかかわらず、施術所で行ったとして、不正に療養費の支給申請を行っていたことが確認され、受領委任の取扱いの中止相当となりました。
事例5 接骨院の監査拒否(監査欠席)での中止
柔道整復師が監査に出頭せずに、監査拒否、監査欠席での療養費の受領委任の取扱いの中止相当の実例です。個別指導、そして監査に欠席すると、最終的には受領委任の取扱いの中止となります。昨今では、このような形で中止となるケースが増えていると感じます。
【事例紹介】
被保険者から、保険者から送付された医療費通知に記載されている通院日数が、自分の通院日数の記録より明らかに多く、療養費の請求に疑義があるとの情報提供があり、個別指導を実施したところ、明確な回答が得られず指導を中断し、患者調査を行ったところ、架空請求及び付増請求等の不正請求が疑われたため個別指導を中止し、監査の実施に至りました。監査を実施するために柔道整復師に対して出頭を求めましたが、正当な理由なく出頭せず欠席し、監査を拒否しました。
柔道整復師について、厚生局の監査の欠席により、施術管理者が正当な理由なく監査を拒否したとの理由で、受領委任の取扱いの中止相当となりました。
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