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コラム:薬局・薬剤師への個別指導(行政指導)対応

更新日:2022年12月9日

保険医療機関・保険薬局への個別指導(行政指導)について、ご存知でしょうか。

ここでは、保険薬局への厚生局による健康保険に関する調剤報酬の請求の個別指導について、雑感などを書きます。


薬剤師の方のイメージでは、新規指導(開局してしばらくして実施される新規個別指導)で立ち会った、というものが多いかと思いますが、高点数や情報提供でも個別指導が実施されますので、突然の個別指導の通知で慌てないように、薬局個別指導についてきちんと把握し理解しておくことは重要というべきです。


1 薬局個別指導の留意点

薬局の個別指導(行政指導)においては、調剤報酬の請求の仕組み上、医科や歯科に比して請求要件などが比較的わかりやすくミスが生じずらいため、医師や歯科医師ほどの不安を薬剤師は感じないことが多いのではないかとの印象です。もちろん、調剤報酬の請求も複雑であり、過誤が生じてしまっていることも多いのですが、医科や歯科に比べれば、まだわかりやすい、ということです。また、処方箋の存在が保険調剤の前提であるため、薬局において不正が行いずらい、という側面も否定できません。事実、厚生局による保険薬局の指定の取消処分(取消相当)は、保険医療機関(医科や歯科のクリニック)にくらべ、統計数値上、少なくなっています。


薬局の場合は、医科や歯科と異なり、株式会社が開設者となっているケースが多く、その代表取締役が薬剤師ではないことが稀ではありません。その社長が調剤報酬の請求の細かな仕組みを十分に理解していないこともあり、また、代表者が個別指導の出席の時間が取りづらいこともあります。そこで、薬局の個別指導では、開設者である代表取締役ではなく、それに代わる者として、担当役員などが代表取締役の代わりに出席することもあります(なお、医療法人が開設者である保険医療機関に対する個別指導の場合も、同様に理事長に代わる者が出席するケースがあります。)。


もっとも、個別指導での回答者は、もっぱら管理薬剤師です。管理薬剤師が、厚生局の担当者からの質問などに対し、適切に対応できるよう準備することがポイントとなります。


なお、薬局の場合は、個別指導よりも、保健所など都道府県による開設者に対する行政指導、行政処分の対応に留意する必要があります。個別指導の場合は、監査や聴聞の結果、取消処分となったとしても、基本的にはその薬局単位(ただし、その開設者の薬局全体への影響もあります。)なのですが、都道府県による薬務課などの行政処分の場合は、開設者への処分となり、より広範囲に大きな影響が出るためです。


薬局への都道府県による行政処分は、厚生局による行政処分と同様、都道府県がウェブページなどで公開しており、行政処分がなされた場合の薬局経営への影響は、甚大です。


薬局への都道府県の行政処分の場合は、都道府県の担当者の考え方により、処分がなされるか否か、大きく変わるという印象があります。行政処分は段階を踏んでから実施されますので、その各プロセスにおいて担当者の意向を的確に把握し、行政処分がなされないよう手を打っていくことが肝心です。


行政処分全般にいえるのですが、行政が内部的に方針を固めてから、内部的な決裁を得てから、薬局側で弁明書などを提出しても、処分の流れを覆すことは一般に困難です。行政が内部的に方針を固める前の時点で、処分がなされないよう適切に弁明し、証拠なども出し切ってしまうことがポイントとなります。


保険薬局への個別指導の流れなどについては、実例を知ることが肝心であり、例えば以下のページのコラムで厚生局の指導監査の実例の記載があります。



2 一部負担金について

薬局の場合、従業員や従業員の家族について、当該薬局で調剤をした場合に、一部負担金の相当額を福利厚生費などとして実質的に薬局が負担しているケースがあります。


これについては、一部負担金相当額の福利厚生費での開設者負担は、患者の誘導となり、薬担規則上、望ましくないものの、厚生局としては、黙認している状況と思われます。


ただ、程度問題である部分があり、従業員本人のみならず例えば本人の関係者などまで開設者の負担範囲を広げると、個別指導などで問題があると指摘されるリスクが増すことになります。


なお、税務上、福利厚生費として認められる範囲と、厚生局が薬担規則上の問題を指摘しない範囲は、必ずしも一致しませんので、注意する必要があります。この点を誤解して、福利厚生費として認められる範囲が許容範囲である、と即断しないようにしてください。


一部負担金の免除や減額について、厚生局は目を光らせているのですが、この理由は、一部負担金の減免が、水増し請求や架空請求などの不正請求に結び付きやすいためです。


患者さんが費用を全く負担していない場合、あるいは例えば500円など定額である場合は、患者さんが、その調剤について薬局が保険者にいくら請求しているか、気にしなくなってしまいます。患者さんとしては、お金を支払っていないなどのため、保険者にいくら請求がなされていようと、気にならなくなります。


逆に、薬局としては、一部負担金を満額もらっていないので、その分の調剤報酬を上乗せしてレセプト請求をしたいインセンティブが働きます。その結果、やっていない保険調剤行為などを付け増して、水増しして請求をしてしまうことが類型的に多いのです。少なくとも、厚生労働省はそのように考えているようです。これは、典型的な不正請求となります。


当たり前ですが、適切にまっとうに薬局業務を行い、その前提で、どのように業績を上げていくか模索し、経営をしていくことが重要です。


薬局の個別指導での具体的な指摘事項については、厚生局がホームページで公開しています。個別指導で実際に指摘されがちな誤りやすい点であり、参考になりますので、個別指導に臨む際に、また、日常の適切な薬局運営のために、一読をお勧めします。

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